危険・キツイ・子どもはかわいいの4Kの作業になるのがおう吐処理です。
キッチリと感染防止対策を取った上で処理をすると汗だくになり、キツイ作業になります。
僕が汗っかきなだけかもしれませんが、次のおう吐に備え準備するとなると時間もかなり費やします。
なぜここまで吐物に対して時間と労力を費やすのかと言うと自分が感染しない又は、子ども・職員・その家族に感染させないためです。
子どものおう吐から多くの家族に影響を与えることは十分に考えられます。
正直子どものおう吐物なら素手でも、全然平気で触って処理できます。
なぜここまで神経質になるかと言うと、ノロウイルスが怖いからです。
ノロウイルスについては『あとがき』で詳しく書いていますが、ポイントとしては年中感染する可能性がある、感染力が強すぎる事です。
しかし今はかなり不安や心配がなくなりました。
それは消毒業者さんにも手伝ってもらい、おう吐物処理のマニュアル化でき、作業を分担することで、安全に比較的楽におう吐処理できる様になったからです。
今回はおう吐処理の一連の流れをお伝えします。
この記事を読んだあなたは…
《ケア編》続編となりますので、そちらも見て頂ければと思います。
おう吐処理の流れ
ステップ 1
最重要項目が準備です。
ここで8割が決まってしまうと言っても過言では無いです。
《準備する物》
- ①蓋付きのバケツ(四角の6.5〜7.5Lがオススメ)×1
- ②キッチン泡ハイター(オススメは医療用泡ハイター)×1
- ③使い捨て袖付きガウン×2
- ④使い捨てゴム手袋×4セット以上
- ⑤使い捨てマスク×2
- ⑥使い捨てビニール靴カバー×2
- ⑦100円均一のサンダル×1
- ⑧新聞紙×数枚
- ⑨ペーパータオル×5cm程の束
- ⑩45Lゴミ袋×5
- ⑪15L(バケツ口より大きいサイズ)ゴミ袋×5
- ⑫塩素系漂白剤(ハイターなど)
- ⑬ペットボトル(500ml)×2
上記一式をバケツの中に全て収めます。
バケツはゴミ箱の機能も兼ねています。
《おう吐処理セット作成手順》
- バケツをゴミ箱にする為、45ゴミみ袋を中にかけます
- 次いで15Lゴミ袋をその上にかけて、バケツの内側に2重でゴミ袋がかかっている状態にします
- キッチン泡ハイターをバケツの底に入れます
- コンパクトにしたサンダルとビニール靴カバーをセットにしてバケツに入れます
- 新聞とペーパータオルを入れ、残りは袋にまとめて入れて完了です
- ⑫・⑬(ハイターとペットボトル)は子どもの手の届かない別の場所で保管します
誰でもおう吐処理セットを作成出来るように、一覧表をバケツに貼っておきます。
園では7セット作りすぐに持ち出せるよう配置しています。
ステップ 2
おう吐処理をするメンバー編成をします。
【状況】はクラスの中の広い場所で1歳児さんがおう吐した。熱中症や頭部打撲の可能性は低い。ビックリして泣いて立っている。
発見した人まず職員を集めます。
【重要ポイント】人数は3人で対応します。
- A 吐いた子どものケアをする職員
- B 他の子どもを見る職員
- C おう吐物処理をする職員
少数精鋭でおう吐物処理を行うことで、感染拡大の防止や安全に保育を継続できます。
大前提に《ケア編》でもお伝えした救急要請しないといけない場合は、子どもの応急処置が最優先されるのでこれからお伝えする内容とは違ってきます。
【重要ポイント】おう吐した子どもから半径2m以内を汚染区域その外側を清潔区域とします。
椅子などで境界線をみんながわかる様にすると良いです。
子どもはバンバン汚染区域に入ってきます。
一度測って見てほしいのですが2mの範囲は想像以上に広いです。
この2mは大人が立っている状態でおう吐した場合に、おう吐物が飛び散る範囲を表しています。
子どもの場合必ずしも当てはまりませんが、想像以上に飛び散ることを覚えておいて下さい。
汚染区域に入れる人は吐いた子どもとAの職員とCの職員の3人です。
A 吐いた子どものケアをする職員
【A】は子どもを落ち着かせて、着替えまで行い汚染区域から清潔区域の看護師等に子どもを受け渡す役割です。
子どもがおう吐したその場でじっと出来る場合は、【C】の職員と同様にガウンを着るなど感染防御をしてから汚染区域に入りケアを始めます。
すでに体に吐物がかかった、子どもが動き回る状況では子どもの側で安静を促します。
最低マスクとゴム手袋をつけるようにしましょう。
【C】の職員から着替えとゴム手袋を受け取りましょう。
着替えは全身行います。
3〜5歳児さんになると羞恥心に配慮して、他の人が避難し見えない状況で着替えたり、できるだけ汚染された衣服を脱ぎ、使い捨てガウンを体に巻いてトイレなどで着替えたりします。
【A】の衣服も汚染されている場合も同様に使い捨てガウンを着用し、飛び散らないようにして更衣してもらっています。
今の時期つい忘れがちなのが、マスクを交換することです。
コロナ禍でマスクが自然になり、何回か交換を忘れていた事があるので注意です。
仕上げは必ず手洗いと消毒です。
B 他の子どもを見る職員
【B】は他の園児に吐物の汚染が無いか?同様に体調の悪い人がいないか?など確認し、安全に保育を継続できる場所(清潔区域)に避難誘導します。
1人で見守りができない場合は応援を呼びます。
3歳児以降で避難後に静かに遊べる場合は、【A・B】の補助に入ります。
具体的には汚染区域の外から物品の調達や患者の状況などを伝えたりします。
C おう吐処理を行う職員
今回の記事のメインテーマになります。
おう吐処理を行う人がおさて欲しい事があります。
それは全てのおう吐物にはノロウイルスが入っていると仮定して処理を行うことです。
そうすればベストなおう吐処理ができます。
ウイルスは見えないしイメージがつきにくいですが、吐物を片栗粉に見立てて処理をして下さい。
なぜなら片栗粉を雑に扱うと粉が舞い上がるのはイメージできます。
この性質はノロウイルスも同様で、乾燥した吐物の部位から空気中に舞い上がります。
恐ろしいことに空気感染する性質があります。
なので吐物の処理は迅速に乾燥させず、そっーと飛び散らない様に処理することがポイントです。
暖房器具の温風などは切るようにします。
おう吐処理の具体的な方法
ステップ 3
【1】 消毒薬を作る
ハイターなどの次亜塩素酸ナトリウムとペットボトルを用意し、濃度0.1%(1000ppm)の消毒液を2本作成します。
作成方法は下記を参考にそれぞれの商品名で調べて見て下さい。
ハイターは時間経過とともに濃度が下がるので、いつ購入したかわからないものは、『購入から3年以内』で計算します。
3年以上経つと著しく濃度が低下するようで、破棄するようにしましょう。
500mlペットボトルには10ml以上入れます。
原液で使えば1番良いのでは?と考えていましたが、適切な濃度で1番効果を発揮するそうです。
【2】 おう吐処理セット・消毒液・着替えを持って現場に急行します。
現場では汚染区域と清潔区域を分けるため処理セットを清潔区域に置きます。
中身を出して【A】の職員に着替えと新聞紙・手袋・マスクを渡します。
新聞紙は簡易的に清潔な場所を作るためで、その上で着替えをします。
まだ汚染区域には入りません。
【3】感染防護のため防護具を装着する
《装着の順番》
①サンダル+シューズカバー⇒②ガウン⇒③マスク⇒④手袋(2枚重ね)
なぜサンダルを履くかは、保育室などでは靴下のみ履いている場合があるからです。
靴を履いている場合はその上からシューズカバーをしてもいいです。
【4】使いやすい様に準備
ペーパータオル・ビニール袋・予備のゴム手袋を取り出しやすいように並べておきます。
処理中に追加で欲しい場合は、【B】等の他の職員に持ってきてもらいます。
【5】(いよいよノロとの対決)目に見える吐物を除去する
明らかに吐物がある所にペーパータオルをそっとのせ、その上からキッチンハイターを優しくかけます。
吐物周囲を外側から吐物側に(中心に寄せ集める様に)向かってペーパータオルで集めて除去します。
吐物はバケツの1枚目の内袋に入れます。
目に見える吐物を全て除去し、1枚目の手袋を外し、袋の中に消毒液を流し込み袋を縛ります。
今の状態はバケツの内側に45Lのゴミ袋がセットされていて、15Lのゴミ袋の中に吐物が入っています。
【6】園児の汚染された衣服やオモチャなどの処理
おう吐物がついた衣服の洗浄・消毒は園では行いません。
洗浄することで感染を広げる危険があること、衣服の消毒がしにくい(ハイターで色落ちする)などの理由があります。
ビニール袋を2重にして安全な状態で返却し、消毒方法をお伝えします。
オモチャや制作物はできるだけ捨てます。
捨てることができない物は消毒するため、まとめて45Lの袋に入れておきます。
【7】汚染区域の消毒
ペーパータオルに作成した消毒液をヒタヒタに染み込ませ、外側から中心に向かって汚染区域(約半径2m)を消毒液でヒタヒタになるよう拭いて行きます。
この作業が大変です。
腰が痛くなります。(頑張りどころです!)
全て拭けたら消毒の為10分間ほど放置します。
【8】防護具を脱ぐ
現時点で1番汚染されているのは防護具なので、安全に取り外します。
靴の裏底の消毒の為、ペーパータオルに消毒液を浸したものを準備しておきます。
《取り外しの順番》
①手袋⇒②ガウン⇒③シューズカバー⇒④マスク
特に手袋を1番に外すことは重要です。
1番汚染されている上、色々な所を無意識に触ってしまうので注意が必要です。
手袋を外した後に消毒することが理想ですが、現場では難しいかもしれません。
ガウンは外側が汚染されていて、内側(身体側)が清潔なので、首の後ろやガウンの内側を持って汚染された外側を包むように脱ぎます。
シューズカバーを脱ぎます(できるだけ汚染されていな部位を持って)。
マスクは耳のヒモ部分をつまんで外します。
最後に消毒用ペーパータオルを踏み、靴の裏底を消毒し汚染区域をでます。
すべての防具を45Lの袋に入れ、袋を縛ります。
必ず手洗いを行います。
【9】換気をする
最低5分間は換気をします。
空気中のウイルスのを外に出すためです。
空気の流れをみて、間違っても子どもたちがいる方に空気が流れないようにします。
【10】保育環境の復旧
消毒薬で拭いたあとの10分後は、清潔区域になっています。
最後に手袋をはめて雑巾などで水拭きをして完了です。
衣類やオモチャ等の消毒
ステップ 4
衣類やおもちゃは理想は捨てることですが、無理な場合は浸け置き消毒します。
マスク・手袋装着後に消毒液(ハイター0.02%/200ppm)を準備します。
先程の『ハイター希釈の目安』を参考にして下さい。
衣服を一度もみ洗いし、その後消毒液に10分浸け置きします。
その後単独で洗濯機にかけます。
オモチャ同様に付着した吐物を落とした後に、消毒薬で10分浸け置きし、乾燥させて完了です。
あとがき
そうは言っても思い通りにならない嘔吐処理
今回具体的な嘔吐処理の方法をお伝えしましたが、思い通りにならないのがおう吐処理です。
具体的には食事中の場合は、汚染区域の食事を交換したり、他の園児に吐物がかかった場合もとても大変になります。
机の足の消毒だったり、本当に様々な状況があり毎回同じ様なパターンは無く、臨機応変に対応する場面が多いです。
だからこそ基本の動きがとても大事だと思っています。
ノロウイルスについて
ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス感染症)は、一年中発生しています。
特に11月〜1月にかけて流行します。
この病気の恐い所は、感染力が非常に強く、適切に処理しないとウイルスが舞い上がり、空気感染をおこします。
また治療法がなく、対処療法しかないことも挙げられます。
潜伏期間は12~48時間。
多くは1~3日で治りますが、何度も感染します。
治ったとしても、3週間以上便からは、ノロウイルスが検出されることがあるので、手洗いの徹底を行う事が大事になってきます。
ノロウイルス感染症のあと登園したなら、排便後のトイレの消毒やオムツを捨てる時に、袋に入れ消毒液を流し込む等の対応をします。
症状は急激な吐き気・おう吐、腹痛、微熱です。
予防は…
- 手洗い
- 料理の十分な加熱
- 便座を中心にドアノブ、スイッチ、調理器具などの消毒など
運動会など園庭でのおう吐処理
園庭やグランドでおう吐した時どうするか悩む人もいるかも知れません。
そのままにしておく事もできないです。
方法としては…
砂の上のおう吐物は、ハイター(1000ppm)などを流し込み、その後シャベルで砂ごとすくいゴミ袋に捨てます。
また嘔吐物の周りもハイター(1000ppm)などを流し込みます。
屋外では空気感染の可能性は低く、ウイルスの付いた砂を触らないように処理することが必要です。
次亜塩素酸水
次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水この2つはノロウイルスなど強いウイルスに対し効果があります。
名前もにているので混同されがちですが、大きな違いとしては安全性の面で次亜塩素酸水が勝っています。
僕の園でも次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)はあまり使っておらず、浸け置き消毒の時ぐらいです。
金属を腐食させる点や人体には使えない点を見ると、保育園では次亜塩素酸水が使いやすく、安全です。
価格の面ではハイターが圧勝します。
今回お伝えしたおう吐処理の方法でも2度拭きの作業がいらなかったり、処理途中の手指の消毒に使えるなどより安全におう吐処理ができます。
一度使用を検討しても良いかもしれません。
最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
動画だとよりイメージしやすいと思います。
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