ほぼ100%保育施設にアレルギーを持つ子どもはいると言われており、1施設平均3.6人いるとも言われています。
私の施設でも数名アレルギーを持つ子どもがいるので、いつアレルギー症状がでてもおかしくない状況にあります。
調査で約97%の施設が食物アレルギー対策(誤食誤配防止)出来ていると答えているのですが、実際は約26%の施設で食べてはいけない物を食べた・配膳したとなっています。
何が原因?と思われますがほとんどが単純なミス(ヒューマンエラー)です。
機械でなく人がすることなので、事故が起こることは仕方がないです。
事故が起きることを前提で園内生活を送ることが重要だと思います。
そこでこの記事ではアレルギー原因食物を食べた時の対応をお伝えしたいと思います。
保育園看護師や目指してい方、保育士さん向けの内容となっています。
今回の内容も《保育園看護師への道STEP5・6》と同じく、2021年に開催されました厚生労働省主催のアレルギー研修に参加した内容をまとめたものになります。
【今回の内容でこう変わります】
食物アレルギーの症状が出た場合の応急処置の方法がわかります。それではよろしくおねがいします。
現状
- 食物アレルギーを持つ子どもは全体(0~6歳)の4%。1歳児は7.1%と多い
- 保育中に初めて発症した子は0歳児で0.68%。全体では0.14%
- アナフィラキシーを発症した子どもがいる施設は4.5%。そのうちエピペンを使用したのは2.1%
命にも関わるアナフィラキシー(後で詳しく説明します)にも対応することが予想されます。
個人の感想としてはアナフィラキシーの4.5%は多いように感じました。
対応体制を整える
一番大事なポイント!
① 安全性を最優先に考える
画像の様に安全性は、医師の指示や保護者の要望など全てにおいて最優先されるものです。
言い換えれば園で安全にできないことはしない。
具体的には医師から複数の除去食の指示がでたり、小麦の除去の中でも醤油も除去してくださいなどの厳しい指示が出た際に、実際にそれらを排除して安全な食事が提供できるか考えます。
園児1人なら完全に対応できることでも。複数の園児の場合は安全に食事提供ができないこともあります。無理をして対応しても誤食があれば意味がありません。
職員の状況なども違うので各園独自で考える必要があります。
安全性を高める為に違う角度からみると、【STEP5】の記事でもお伝えしたように
- アレルギー対象者を減らす
- 配膳時のヒューマンエラーが多いことを注意喚起する
- 初めて食べる物が給食とならないように同量以上を、2回以上家庭で食べてきてもらうようにするなどがあります
②【職員体制】
8〜10名のチームで対応します。メンバー構成は…
- 現場の指揮・管理監督:園長
- 観察・対応・記録:看護師ら1~2名
- 連絡(保護者・救急車):担任ら2名
- 準備(エピペン・内服薬・AED・マニュアル等):保育士2~3名
- その他(誤食給食確認・他児の対応・救急車誘導等):保育士・栄養士
リスト化して事故発生時に即時にメンバー構成できるようにして、役割ごとそれぞれが効率よく動けるようにしましょう。
③【フローチャート】
厚生労働省の『保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)』(p36)にフローチャートがあります。
赤・黄・青(画像の右)と信号機と同じように危険度を見分けることが出来ます。
園ではラミネートしてすぐに活用できるように壁にかけて皆の目の届く所においています。
フローチャートに付け加えると良いこと
- アレルギー食物を“食べた付いた”がわかった早い段階で、可能な範囲のアレルギー食物を取り除く。(拭ったりうがいしたり)
- “青信号”部分の安静少なくとも1時間は急変の可能性がある為、常に大人が見守れる様にします。1時間経過後も気をつけます。理由は生命の危険がある症状(アナフィラキシー)は原因物質に触れて2時間以内に起こるとされているからです。
- 保護者への連絡漏れがないようにどのタイミングで連絡するか追加しておきましょう。同時並行でできればよいのですが優先順位的には応急処置や救急車を呼んだあとです。
④【記録用紙】
この用紙も同様のガイドライン(p77)に入っていますので、ダウンロードして使用しています。
救急隊との情報交換や対応の振り返りにも有効です
フローチャートと記録用紙にそって対応すれば、いつ・どこで・だれもがどんな状況でも同じ様な対応ができます。
実際に症状が出ている園児を目の当たりにすると、いくら研修等でシュミレーションしていても抜けやモレが出てくると思います。
記録用紙とフローチャートを準備し仕組化しましょう
⑤【エピペン等の管理】
園によって様々かと思いますが、次の対応が考えられます。
- 園で長期に保管する
- 毎回家から持ってきてもらい一時的に預かる
保管環境が良いことや全員が周知でき、常に子どもにすぐに投与できる場所に薬剤を保管します。
保管環境は直射日光の当たらない、人が過ごしている環境下です。
特に遠足など園を離れる場合は忘れやすいので必ずチェックできるように、持ち物リストに入れましょう。
エピペンは後ほどお伝えします。
園では記録用紙と一緒に保管し近くにフローチャートも置いています。
アナフィラキシーショック
アナフィラキシーとは…
食物・薬物・ハチ毒などが原因の即時型(原因に曝露されて2時間以内)アレルギー反応をまとめてアナフィラキシーと呼びます。
皮ふ・呼吸器・消化器などの多臓器に症状が出ます。
そして血圧低下などの強い症状が出た場合アナフィラキシーショックを起こします。
意識がない、ぐったりしている、息が苦しい、強い咳、繰り返し吐くなど心肺蘇生法が必要になる場合もあります。
【フローチャート】の赤信号に該当し最悪死に至ります。
残念ながら現在まで小学生が2名お亡くなりになっています。
乳幼児の死亡はありませんが十分に可能性があります。
応急処置の方法
原因食物を食べてしまった!やることはシンプルです。
- 人を集める
- フローチャートで動く
- 園長・担任・看護師などがそれぞれの役割を行う
発見者は深呼吸!答えはフローチャートなどに載っています
①内線や人を使って人を集めましょう何名で対応するかおぼえていますか?
②患者に対してはフローチャートを見ながら順番に対応し記録します。
③連絡する人や栄養士に食材を確認する人、他の園児を見る人などチームで動きます。
給食の食材リストは受診の際の診断に活用されます。(原因不明のアレルギーなど)
【応急処置の方法】
大事なポイント!
フローチャートにそって現在の信号機の色は何かを見ます
緊急性は高いのかの判別を行います。
グリーンの矢印《全身の症状》意識がある・なし(悪い)をみています
オレンジの矢印《呼吸の症状》:窒息や呼吸困難をみています。
この2つは特に緊急性が高く意識と呼吸がないなら心肺蘇生も必要となります。
ブルーの矢印《消化器の症状》:消化器の症状では死にませんが同じように救急搬送が必要です
ピンクの矢印《重要なポイント》:ぐったりした人を焦って抱きかかえ運ぶと血圧が下がったりと悪化させてしまうのでその場で安静にします。
どうしても運ぶときは子どもの体勢を変えないで担架などで慎重に運びます。
【呼吸器の症状】を詳しくみていきます。
画像の様に聴診器がなくても呼吸音がしたり、苦しそうに首を押さえる様子が見られた場合は、気道が腫れて狭くなっている証拠です。
‘赤信号’です。
【応急処置】
エピペンを持っており‘赤信号’が1つでも当てはまるなら最優先で使用します。
◎体勢を整える
《全身の症状(グリーン矢印)》に対し足側高位(ショック体位)
足を上げることで足の血液を心臓や脳などの重要な臓器に運びます
《呼吸器の症状(オレンジ矢印)》に対し半座位
呼吸が苦しくて仰向けになれない時に呼吸を楽にします。大人が背後から体を支えても大丈夫です。
《消化器の症状(ブルー矢印)》に対し側臥位
吐き気や嘔吐があるときの体位で吐いたものが戻って、肺などに行かないようにします。
◎症状チェックシートの《目・口・鼻・顔の症状》《皮膚の症状》は心配しなくていいです。
見た目にとても深刻に見えますが生死には影響しないです。フローチャートどうりに動きましょう。
しかし皮ふ症状などの裏に意識の低下などが隠れている可能性もあるため厳重注意します。
疲れて眠ったように見えた場合は意識が低下しているかもしれません。
少なくとも5分おきの症状観察となっています。
大人は側からはなれないように安静を最低1時間。2時間は特に注意しましょう。
エピペン
緊急時の救世主 エピペン
全身の症状や呼吸器の症状に効果を発揮します。
◎エピペンの使用方法
ガイドライン(p12)にわかりやすくのっていますのでそちらを見てください。
失敗した事例では、自分の親指に打ったや実際には薬液が出てなかったなどあります。
練習が大事ですね。
エピペンの大事なポイント!
迷ったら打つ!
エピペンは打っても死にませんが打たないと死ぬことがあります。
そうはいっても心配だ…注射はこわい…そう思うのは当然です。
心配いりません。エピペンを打っても副作用はほとんどありませんし、しっかりと法律で守られているので迷ったらエピペンを使用しましょう。
(本来本人がエピペンを打つようになっていますが医師法で保育士等が打てるようになっています)
ちゃんと薬剤を注入できるように練習を積みましょう。
エピペンが処方されている人は何本か練習用も渡されているので、借りて職員間で練習しましょう。
《エピペン注意点》
- エピペンに予防効果はない
- 速やかに効果発揮するが持続は10分ほど
- 副作用はほぼ無い。
- 処方された人にしか使用できない(他の園児に使用できない)
- 常温保存(理想15~30℃)
- ズボンのポケット周囲に打つ
- 打ったら5秒数えて針を抜く
- しっかり揉む(筋肉注射の為)
- こどもが暴れないように3名でしっかり足を抑える
まとめ
- 生死に関係するアナフィラキシーは4.5%の施設が経験
- アレルギーに対するチームを作り(8〜10名)誰でもいつでも対応できるように仕組み化する
- 安全が最重要(医師の指示などよりも)
- アナフィラキシーショックで命を落としている現実
- 人を集めフローチャートどおりに動けば難しくない
- エピペンは迷ったら打つ
応急処置について説明させて頂きました。
準備が本当に重要でしっかり出来ていれば対応を忘れた時でも正しい動きが出来ますし、何より日々の園生活において子ども・職員・保護者も安心できると思います。
是非年間の研修訓練計画に加えて十分な準備もして子どもの安全を守って行きましょう。
読んで頂きありがとうございました。
動画でも説明していますのでそちらも良かったら見て下さい。
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