穏やかな日常の中で、突然の呼び出し。
子どもが転倒して動けない。どうやら骨折している様子。そんな時あなたはどうしますか?
今回は保育園で骨折や脱臼が起きた時の応急処置についてお伝えします。
年に1回あるかないかの大きな怪我の備えはできていますか?
準備が出来ていないとほとんど起こることの無い大怪我に漠然と不安を抱えてしまいますよね。
保育園看護師さんや保育士さんの毎日がより充実したものにするために活用てほしです。
今回の記事を読んで頂くとこうなります。
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こどもの骨折の特徴と骨折原因・部位が分かります
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RICE処置を基本に骨折と脱臼の応急処置ができます
適切な応急処置をしケガから早く回復させる事ができるようになります。
子どもの骨折
原因と部位
骨折の原因は転倒や転落によるものがほとんどです。
肘の関節まわりや、手首から肘(前腕)など腕の骨折が約半数を占め、次いで多いのが鎖骨や足の骨折です。
骨折時の痛みは打撲だけの時に比べ異常に強く、自分で手指を動かすことや歩くことは通常できません。
痛みだけでなく骨折したところを中心にすぐに大きく腫れてきます。
また骨がズレていれば変形して見えます。
特徴
子どもは腫れが少なかったり、骨折していない部位の痛みを訴えたりすることもあり1ヶ所だけを見るのでなく全身を観察する必要があります。
例えば肩の近くを骨折している場合に手首の痛みばかり訴えたとすると、手首は何も問題ないため様子を見ようとなります。
この場合しっかりと全身を見て触れて確かめる必要があります。
「歩けるから大丈夫」「関節が動くから骨折していない」「痛みを強く感じてない」から大丈夫などと判断しないで下さい。
「触ると泣く」「手を使わない」「足に体重をかけられない」などの症状があれば、骨折を疑って整形外科を受診しましょう。
判断が難しかった出来事を紹介します。
2歳児さんで15cmほどの高さからジャンプした後に膝を痛がっていました。
歩くことができて痛みもそれほど強くなく、腫れもわからないぐらいでした。
氷で冷やした後歩いてお家に帰りました。痛みが長引いたこともあり、病院を受診され膝を骨折していることがわかりました。
病棟勤務の時に骨折した高齢者の方が普通に歩いているのを思い出しました。
ほんとうに骨折の判断が難しいと感じた場面です。もしかすると稀なことなのかもしれませんが、今はより注意して見るようになりました。
骨折の応急処置
RICE処置のおさらい
まず保育園看護師への道【STEP10】で紹介したRICE処置をサラっとおさらいです。
まだ観ていない方はそちらを先に観てほしいです。
- 安静ではとにかく動かさない。副子などを利用して固定したり、座らせる。
- 冷却では方法として15分毎に冷やすのを止めてまた痛みが出てきたら冷やす。また氷のうを作る時はたくさんの氷に必ず少しの水を入れ空気を抜く。
- 圧迫では軽く圧力をかけ弾性包帯などを巻きます。キツ過ぎないか指先のシビレや色を見る
- 挙上では心臓より高い位置に上げると痛みなどがやわらぐ。
骨折の応急処置では圧迫はズレた骨を無理に戻すこと神経や血管の損傷の危険があるのでしません。
具体的方法【安静】
まずは安静のため固定です。
シーネ(副子/ふくし)を準備します。シーネは添え木のような物で、折れた所を固定するのに使います。
硬い素材(ダンボールを3枚ほど重ねた硬さ)で、折れた所の上下の2関節を覆える十分に大きいサイズを準備します。
例えば手首から20cmほどの場所を骨折したとすると、手首の関節と肘の関節の2関節を覆える様にします。(肘〜指先まで。ピッタリでなく余裕のあるサイズ)
肘が骨折したなら肩関節と手首の関節の要領です。
僕は大小様々なサイズ(子ども用)を作って準備しています。
準備した物がない場合でも身近なもので代用できます。
雑誌で骨折した所を覆うや長い棒など固定できれば何でも良いです。
その他担架やベッド上なら、腕の骨折なら体幹にバスタオル等で巻いて固定したり、足の骨折なら健康な足をシーネ代わりにして固定したりもできます。
要するに動かなければどんな方法でも大丈夫です。
注意点は骨折した所を矯正して固定することです。
変な方向に曲がった腕を正しい位置に戻す事はしないで、発見したそのままの状態をキープして固定します。
圧迫でもお伝えしたように、骨を戻す行為は血管や神経を損傷させてしまうので禁止です。
腕の場合固定した後三角巾で釣ってあげるとより安静を作ることができます。
※指先の色やシビレ具合をチェックする為、指先は三角巾等から出して見えるように覆います。
具体的方法【冷却】
次いで冷却です。
骨折した所を中心に氷のうで冷やします。
ポイントは15分ごとに冷やすのを止めて、また痛みが出てきたら冷やします。
氷のうを作る時はたくさんの氷に少しの水を必ず入れ空気を抜きます。
ずっと氷で冷やしたままにしないようにします。
具体的方法【挙上】
最後は挙上です。
心臓より高い位置に骨折した所を上げると出血や腫れを抑え、痛みをかなりやわらげます。
無理に上げず可能な範囲であげます。毛布などをケガした部位の下に入れるといいですね。
骨が皮フから突き出ている場合
骨が皮フから突き出ている時は救急車を呼びます。
骨は感染しやすく緊急で適切に病院で処置する必要があるからです。
救急隊が来るまでの処置は、傷口を汚染しないよう清潔なガーゼで覆います。その後シーネで固定します。
止血の為に止血点を押さえます。傷口を直接圧迫しての止血はしません。
骨折した所から心臓に近い部分の大きな血管を圧迫することで出血を止めます。
止血点はその圧迫するポイントです。脇や足の付け根の太い血管などにあります。
詳しくは【止血の方法】の記事を見ていただきたいです。(近日公開予定)
肘の脱臼(肘内障)の応急処置
肘の脱臼(肘内障/ちゅうないしょう)も保育園で発生しやすい病気です。
ご存知の通り腕が引っ張られた場面で肘の関節が外れてしまった状態です。
手をつないでいる時や寝返りなどでも脱臼することがあります。
腕を動かさなければ骨折のような激痛もありませんし腫れも生じません。
腕は動かなくても指は動く、血流の悪化のサインである指の変色もみられない(青白くならない)、手に触れると触られているという感覚(触覚)を感じる事も特徴です。
0才児の肘の脱臼をみた時に困りました。
あきらかな腕を引っ張った様な動作がない状況で、ずっと泣いていてあまり腕を動かさない状態で、もちろん問いかけには答えられず、脱臼なのかそれとも違うことで泣いているのか判断に迷いました。
少し肘が腫れているようにも見えました。とりあえず固定して病院を受診してもらい脱臼だったと分かりました。
応急処置と対策
応急処置は三角巾やバスタオル等で体に固定するか、そのままの状態で安静にします。
腕がダランと伸びた状態のまま体幹に固定します。
整形外科を受診し整復を行います。そこまで緊急性はないので落ち着いて対処できればいいですね。
肘の脱臼をした人は再発しやすのでリスト化して、腕が引っ張られる動作をできるだけ控える様に職員間で注意しています。
子ども同士で引っ張り合いなどの遊びの際は止めるなどの対策を取るといいです。
まとめ
- 子どもは骨折していても歩いたりします。骨折を見逃さないように全身を観察します。
- 「触ると泣く」「手を使わない」「足に体重をかけられない」などの症状があれば骨折を疑って整形外科を受診する。
- RICE処置を応用し安静→冷却→挙上を行う。
- 肘の脱臼は緊急性がないので落ちついて、腕を固定し整形外科受診
アクションプラン
いつでも骨折・脱臼が起きてもいいように準備してください。
具体的には3つ!これだけは今日から準備して頂けたらなと思います。
- 固定用のダンボール(大小サイズ)
- 大きい三角巾・バスタオル
- どの病院に連れて行くかのリストアップ
病院によっては子どもの場合見れないと言われる場合があります。
子どもが受診でき手術まで出来る、救急を受け入れている大きな病院がいいです。
骨折ほどの大きなケガでは頭のダメージも気になるところです。脳神経外科もあるような病院だとなお安心ですね。
また搬送方法もイメージしておくとなお良いですね。
動画でも解説していますのでよければそちらも見て頂けるとありがたいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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