「この赤い点々なに?」「お腹にポツポツが出てる」「さっきより増えてるよね」こんな声が毎日のように保育現場から聞こえてきます。
僕も呼ばれて皮ふの状態を見るのですが、よくわからない事がほとんどでよく困っています。
小さな皮膚症状だけならまだしも広範囲におよんでいる場合は、インパクトもあり現場でパニックになることもありました。
しかし今はかなり冷静に対応することが出来ています。
発しんと特徴的な感染症を知ることで判断がとてもしやすくなることに気づきました。
保育園現場での悩みが解消できるよう、発しんと感染症についてまとめた記事となっています。
【自己紹介】私は保育園看護師をしている岡安光彦と申します。
看護師がいなかった園でゼロから立ち上げて3年になります。
そこで学んだ事などをお伝えしています。
今回『保育所における感染症対策ガイドライン』『日本皮膚科学科HP』を参考に現場のリアルな状況も交えてお伝えします。
この記事を読んだ後あなたはこうなっています。
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皮ふの発しん11種類がわかると感染症の見分けや記録を書く際や健康診断で医師に正確な情報を伝えることが出来る
- よくわからない発しんに対し冷静に対応出来るようになります
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観察と対応についてわかります
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トビヒ・じんま疹・みずイボ・汗疹についてわかるようになります
保育現場のリアルな現状
冒頭でもお伝えしたように、子どもの皮膚症状を見ながら大人数名が悩む穏やかな時間が流れます。
大体出現する場所はまとまっていて、顔・首・胸・お腹・背中・手首・肘・脇・股によく見られます。
低年齢児に多く見られ、下痢でお尻の周りが痛く泣く子どもや痒みが強い場合こちらもつらくなります。
発疹はなんて読む?
まず本題に入る前に発疹は何と読むか知っていますか?
調べた結果どっちも正解のようです。
『ほっしん』は医療業界でよく読まれているそうです。
11種類の発しんの見分け方
発疹や皮膚症状と書いていますがどちらも同じ意味です。
発しん=皮ふの変化(症状)のことで病気の名前でないことを覚えておいて下さい。
現場でよく見られる症状 BEST 3
【1位】紅斑(こうはん):盛り上がりの無い赤色のもの。
色は炎症などで血管が拡張している為に赤く見えます。発赤(ほっせき)と同じ意味です。
【2位】丘疹(きゅうしん):5mm程度までの半球状に皮膚から盛り上がったもの。
ぶつぶつプツプツのことです。
【3位】びらん:皮膚が薄くはがれたもの(ただれ)。
液が染み出て表面がジュクジュクしていてる状態で、掻いたりしてなる場合が多いです。
その他の発しん
【4位】水疱(すいほう):水ぶくれのことで、透明な水分が溜まってる
【5位】膿疱(のうほう):水ぶくれの膿が溜まった状態
【6位】痂皮(かひ):かさぶた
【7位】潰瘍(かいよう):びらんよりも深く傷になっている状態
【8位】膨疹(ぼうしん):皮ふの膨らみで一時的なむくみ。病気のじんましんの時に見られる
【9位】紫斑(しはん):盛り上がりのない紫色。内出血している状態
【10位】結節(けっせつ):しこり。丘疹よりも大きく盛り上がった状態
【11位】白斑(はくはん):盛り上がりのない白色。色素が抜けた状態
保育現場でこれらの用語を使ってコミュニケーションとる事はないです。
しかし感染症の見分け・記録を書く際や医師に情報共有する際により正確に伝わるので頭の片隅に置いといて下さい。
発しんの観察と対応方法・ケア
【観察ポイント】
- 発しんが出でいる所を見つけます。どこから出現してどう広がっているか。
- 時間とともに増えてないか。写真を取っておく。
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発しんの種類はどれにあたるか。
- かゆみ・痛み、その他症状はあるか
写真は経過を見るのにも役立ちますが、保護者へ症状を伝える時にも言葉で表すより、写真の方が段違いで情報量が多いのでおすすめです。
特に注意するのが痒みが強い時で、ほとんどの場合掻いてしまうので悪化します。
感染症との見分け方
感染症か判断する目安として保育園で流行ったり怖い感染症について7つお伝えします。
- 【手足口病】微熱後に手の平・足裏・口の中に水疱ができる
- 【突発性発しん】38℃以上の熱が3日程続き解熱後に全身に紅斑
- 【溶連菌感染症】発熱と同時に全身に紅斑が出る。イチゴ舌(舌にブツブツ)が特徴
- 【伝染性紅斑/りんご病】微熱と同時に両頬に紅斑が出る。腕と太ももにも網目状の紅斑
- 【麻疹】発熱後熱が下がりまた発熱、全身に紅斑が広がる
- 【風疹】発熱と同時に顔首から全身に紅斑が出る
- 【水痘/水ぼうそう】顔等から全身に広がる。赤い丘疹→水疱→痂皮の経過をとる
症状のでかたは個人差があります。
実際手足口病が流行っていた時は、微熱がないことの方が多かったです。
明らかな症状が出ないことや医師が園におらず誰も正解を言えない中、発しんだけでお迎えを依頼するのは難しい場面があると思います。
しかしこれら判断の目安がわかっていれば保護者に協力依頼しやすいです。
園で流行する感染症の事も踏まえて話をしたり、先に受診した園児の症状などを伝えるとより協力してくれると思います。
お医者さんでも皮膚症状から判断するのは難しいみたいなので現場で悩むところですね。
対応とケア
① 体温が高い・汗をかいていると痒みが増すので環境・空調の調整をする
適切な室内環境の目安
- 室温:(夏)26~28℃ (冬)20~23℃
- 湿度:60%と高め
- 換気:1時間に1回
- 外気温との差:2~5℃
② 刺激の少ない服(木綿など)に着替える。
ガイドラインに載っていないのですが、痒みが強く膨疹になっている場合は、洗浄しよく水分を取りガーゼを当てその上から冷却しています。
30分後にまた観察すると改善していることが多いです。
③ 発熱を伴う時や複数人に同じ発しんがある時は感染症を疑い別室で保育します。
④ 口の中に発しんがある時は刺激の少ない食べ物にする。
- おかゆ等の水分の多い物
- ノド越しの良いもの(プリン、ヨーグルト、ゼリー等)
- 酸っぱい物・辛い物など刺激の強いものは避けて薄味の物にする
よくみる病気
とびひ(伝染性膿痂疹/でんせんせいのうかしん)
あせもや虫刺され等で掻いたり傷になった所に感染し、あっという間に広がる事から【とびひ】と言われるようになりました。
鼻の中にいる菌が原因となることが多いので予防は爪を短くし、鼻をほじらない
とびひの所は石鹸で優しく洗い毎日シャワーだけにする。
外用薬を使用し膿(浸出液)が出ないようガーゼをしていれば登園可能となっています。
プールは水を介して感染しませんが、傷の悪化や接触で感染することがあるので治癒するまで中止します。
水いぼ(伝染性軟属腫/でんせんせいなんぞくしゅ)
保育園に勤め初めて知ったポピュラーな病気です。
1〜5mmの赤みのない丘疹でツヤツヤしています。
潰すと中から白粥上ものが排出しそれが付くことで感染します。
治療は医師の判断で自然に経過をみたり、つぶしたりします。
麻酔のテープを貼り専用のピンセットでつまんで取ったりします。
たまにお迎えの時に園で麻酔テープを貼り、そのまま受診される方もいます。
大きくなるにつれ皮膚のバリア機能の向上で感染しなくなります。
プールは可能ですがタオル等を分ける対応が必要です。
じんましん/蕁麻疹
皮膚の一部が突然赤く、くっきりと膨疹となり(盛り上がり)しばらくして跡形もなく消失します。
「じんましんが出た」とよく耳にしますが、この様な定義がある病気です
“蕁麻”の葉っぱに触れるとこの様な皮膚症状が出るのでこの名前がついたそうです。
症状は痒みやチクチクがあります。
サイズは1mm〜足全体と色々です。
アレルギー性と非アレルギー性があり治療は抗ヒスタミン薬の内服になります。
様々なじんましんがあります。
【コリン性蕁麻疹】入浴・運動で体が温まる時や緊張で汗が出る時に現れるもの。1〜4mmと小さく60分以内に消失します。
【物理性蕁麻疹】擦れや圧迫・寒冷・温熱・日光・振動などが原因で出ます。
【血管性浮腫】と呼ばれるまぶたの腫れも蕁麻疹のひとつにあります。このような症状もよくみられます。症状としてははっきりとした膨疹ではなく痒みもない。消えるまで3日ほどかかることもあります。
原因を取り除くことが大事ですが80%程のじんましんは原因がはっきりとしません。
あせも/汗疹
汗のでる道がつまって行き場のない汗が皮膚の中に溜まり刺激となって発しんがでます。
小さな丘疹が出て痒みがあり急速に現れます。
痒みや赤みのない水晶様汗疹もあります。
対策として涼しい場所で過ごしシャワーをするなど皮ふを清潔にする。
爪を短くし掻かないようにし、木綿などの衣服を着て髪の毛もまとめ上げます。
まとめ
発しんは皮膚の変化や症状のことを言います。
11種類の発しんでは【紅斑(こうはん)、丘疹(きゅうしん)、びらんはよく見る症状】
感染症の見分け、記録や医師との情報共有で必要になってくる
感染症の疑いがある発しんは特徴などを知っておく
【どこから出現して、どう広がってるか、どんな発しん?】
写真を取っておくと観察がしやすく保護者にも正確に伝えることが出来る
よく見る病気【とびひ・水いぼ・あせも・じんましん】
特にじんましんの特徴は押さえて置くと保育園で皮膚症状を見る際に役立ちます。
アクションプラン
次に流行時期を迎える、感染症の発しんはどんなものか1つ調べて下さい
最後まで読んで頂きありがとうございます。
動画でも解説していますのでよければこちらも御覧ください。
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